残っている歯の本数と認知症にはどうやら関係があるようです。
ある医療機関で、認知症でかかっている患者さんの歯の本数を調べたところ、歯が1本も残っていない「総入れ歯」の患者さんが非常に多かったそうです。
75歳以上の認知症の患者さんでは25%が総入れ歯だったそうです。
厚生労働省の発表によれば、75歳以上の方の総入れ歯率は18.24%なので、認知症患者さんのほうが6%以上も高いことになります。(医学的にみて、とても高い数字のようです)
東北大学大学院の研究グループによる、70歳以上の高齢者を対象に行った調査でも、「脳が健康な人」の歯は平均14.9本でしたが、「認知症の疑いあり」と診断された人は9.4本だったそうです。
今は、歯を失う大きな原因である歯周病菌が、アルツハイマー型認知症の原因となることもわかっています。
「歯がない人はボケやすい」というのは、介護医療の現場では共有されている事実のようですが、歯科医院においても歯がたくさん残っている人は、心身がしっかりしていると強く感じています。
それではなぜ、歯が残っていると認知症になりにくいのでしょうか?
どうやら、脳の血流と関係しているようです。
食べ物を噛む筋肉に血液を送っている血管(外頚動脈)と脳に血液を送っている血管は(内頚動脈)は元々同じであり、途中で枝分かれをしています。
物を良く噛むことで、筋肉にたくさんの血液が送り込まれると、同時に脳に送り込まれる血液の量も多くなるようです。
歯の根の周りに「歯根膜」というクッションの役目を果たしている組織があります。
噛むことで歯根膜に圧力がかかると、脳に送り込まれる血液の量が増えると言われています。
歯の本数が多いほど、多くの歯根膜に圧力がかかり、より多くの血液が脳に送り込まれることになります。
起き上がったり、立ったりする時に、歯を食いしばっている人は少なくありません。
そんな人が歯を失ってしまうと体に力が入らず、日常の運動量が減ってしまうのは容易に想像つきます。
運動量が減ると、脳への刺激も少なくなり、認知症へと進んで行きやすくなると思います。
認知症にならないためには、頭のトレーニングも必要かもしれませんが、それ以上に歯を大切にして、残していくことが重要と思われます。