コロナに勝つ口腔ケア

昨年はコロナ一色でしたが、新型コロナウイルス感染症に対する効果的な薬の使い方がわかってきたため、重篤化を防ぐための治療法が効果を挙げてきています。また、あと数ヶ月後には新型コロナウイルスワクチンの接種が始まり、今年後半にはコロナに勝利する日が来ることが期待されます。

 それまでは、①マスクの着用・②手洗いの徹底・③三密の回避等のコロナに感染しない感染させない等の各人の地道な努力が必要であることは言うまでもありません。

 ところで、コロナに隠れて目立たない存在となってしまいました。通常の季節性のインフルエンザはこの1年度のような状態だったのでしょうか?

 

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過去10年の季節性インフルエンザ患者数の推移

 

上のグラフは季節性のインフルエンザの過去10年の感染者数(横軸:週)ですが、2020年においてはコロナが注目され始めた2月末頃(11週頃)から目立った数の発生は認められません。これは、新型コロナへの感染予防対策が季節性インフルエンザの流行を抑え込んでいるものとも考えられます。

 では新型コロナウイルスはなぜ抑えこめないかと言えば、季節性インフルエンザと比較して新型コロナウイルスは感染性が高く、感染しても無症状であることも多く、無症状患者でもウイルス量は多くて、発症前でもウイルスを排出していることなどが、理由として挙げられます。つまり、通常のインフルエンザよりも無自覚のまま、人にうつしてしまう可能性が高い訳です。

 ところで、新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが数個が体の中に入った程度では感染しないことがわかっています。何百という単位以上で体の中に入った時に初めて感染した状態となります。つまり、徹底した手洗いやマスクの着用はウイルスを完全にシャットアウトできなくても、接触するウイルス数を減らすためには効果的な訳です。

 これは外からの敵に対する防御法でが、それと同じに体の内からの防衛も大切です。口腔は外からのウイルスや細菌を撃退するための砦であるため、新型コロナウイルス感染症に備える観点から、お口のケアが健康がいかに大切かをお話しします。

 人の免疫は、害を与えるウイルスや細菌などに対して働き、病気を軽く済ませてくれたり、発症を未然に防いでくれたりします。この病気の発症は、微生物の悪さをする力と免疫力のバランスが崩れた時に生じるのです。このバランスを保つためには、お口の中の有害なウイルスや細菌数を減らし、お口の粘膜や全身の免疫力を優位に保つ必要があります。

 お口の中を清潔に

 その方法の1つが口腔ケアです。口の中には、細菌が沢山いるのをご存知ですか? 常在細菌といって、体を守る働きを示すものもありますが、悪さをする細菌もいます。この悪さをする細菌やウイルスを減らすことが大切です。細菌の塊であるプラークは、歯磨きをしないと落とすことはできません。口の中には、もう1つ細菌の塊があります。それは舌の表面についた舌苔です。

 これらの細菌を口腔ケアにより減らすことで、口腔の免疫が十分に働くことができるようになるのです。口腔の免疫は、IgAという抗体が働き、害を及ぼす微生物を排除してくれる粘膜免疫というシステムで実行されています。しかし、このIgAも口の中が汚れていれば、敵が多すぎて、防衛が難しくなってしまうのです。

 新型コロナウイルスは、口の中に入ると、レセプターと呼ばれる鍵穴のようなところにまるでカギが入るようにくっついて感染していきます。このレセプター(ACE2)は舌の粘膜の上にあり、そのためウイルスの口内感染にも気を付けなくてはいけないと考えられます。また、口の中の衛生状態が悪化すると、口腔内の細菌の数が増えてしまいます。そうすると免疫力が低下したり、細菌による炎症を併発する結果ウイルス性肺炎が重症化する傾向があります。

 これまで、季節性インフルエンザに関しては、お口の中の徹底したケアがインフルエンザの重症化を防ぐのにとても有効であることが、高齢者を対象とした研究から判っています。

 噛むこと・噛めることが大事

 噛む機能は免疫力を維持するために大事です。お口中に問題を抱えている人の中には、歯が抜いたままで放置している、入れ歯が合わないから使わないままでいる、歯周病やむし歯のためにしっかり食べられない、といったように、咀嚼が不十分になっている人もいると思います。そうした方は要注意です。

 よく噛めない状態が長期間続くと、柔らかい食事が常態化しやすくなりますが、それらの多くは炭水化物に偏った食材となってしまいます。これは糖分の摂取量を上げてしまうので、糖尿病を悪化させてしまうリスクを高めます(→免疫力の低下)。また噛む能力を要求される肉類の摂取量が減ることに繋がり、タンパク質の低栄養が進行してしまいます。こうした状態も全身の免疫力の低下を招くことになります。

 免疫力が落ちてしまうと、新型コロナウイルスをはじめあらゆる感染症の重症化につながる恐れがあります。

 今年中に新型コロナウイルスに対して人間が勝利する日が近いことを期待するとともに、ウイルスや感染症に負けないようにするために、口の中の健康を保つことが重要であることを覚えておいていただきたいと思います。

口腔ケアステーション石倉歯科医院院長 井汲憲治

(以上:当院ブログ 2021年1月1日より引用)

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